救助要請の無線

じいちゃんは山岳用無線機というものを、とても重要なツールだと言い毎回持ち歩いている。
この無線機は250gくらいの小型なもので電池で動くようになっている。
アマチュア無線技師2級のライセンスを取得していたので山でも自由に使えた。

いくら携帯が発達したとはいえ、山ではほとんどが圏外で緊急時には頼りにならない。
しかも無線機は現地の救助隊などと情報を交換できるため、重要な判断要因になる。
もちろん緊急事態のときのSOSには非常に頼れる道具だ。。

その日もじいちゃんはハンディ無線機をもって登山をすることにした。
夏登山とあって2泊3日の野宿もする予定を立てていた。
第一日目、午後の3時からスタート、今日は野宿を楽しむのが目的なので、あまり歩かず5時ころには野宿の準備を始めた。

場所はよく登山仲間が野宿する場所で、危険もなく落ち着いた場所である。
火をたき夕飯を食べながら夏の夜を満喫していた。
そこでじいちゃんは、無線機を取り出し誰か周辺にいないか調べてみる事にした。
登山ではよく無線機を使って見ず知らずの登山者同士が情報を交換したり、世間話をしたりする事がよくあった。

ハンディ無線機のスタンダードだと144と430Mhz二つのバンドを使えるが、じいちゃんは無線機に細工をしてバンドを広げたりしてたようで多くの電波を受信できた。
じいちゃんがいろんな周波数をためしていると、電波を受信した。

無線「・・・プッ・ズィーー・・プス・今は・・ここは・・・にる。・・・えますか ズィーーー・・」
じいちゃんは返答した。
「こちらAポイントです。そちらの位置はわかりますか?」

無線「ブーーーズィーーーー・・にいる。まわりに・・・たくさ・・んズィーーー・・・」
じいちゃん「なにかありましたか?どこですか?」
無線「ズィーー・・・かお・い・・・かお・・・岩・・・プー・・」

かおいわ?もしかして顔岩のことか。ここから数時間歩くと顔岩と言われる名所がある。
じいちゃんも明日行く予定の場所だった。

じいちゃん「そこは顔岩ですか?救助隊に連絡しましょうか?」
無線「ズィーーーーーーー・・・・・プっ・・」

様子がおかしい。。何かトラブルに巻き込まれた可能性があるな、じいちゃんは今日中にいけないので、とりあえず救助隊に連絡をすることにした。
だがいくらやっても救助隊と連絡を取る事が出来ない、電波の調子が悪いようだだった。
じいちゃんは、今日のところは寝て、明日自分で確かめる事にした。

じいちゃんは無線の事が気になっていたので予定から2時間早めて朝の4時に出発した。
歩きながら無線機をいじり、また連絡を取ろうと試みた。

無線 「ズィーーーー・・・プス・・・いる・・」
じいちゃん 「良かった。今、顔岩に向かっています。あと1時間というところです。」
無線 「ズィーーーーッかこま・・・こ・・わ・・・・・プッ」
じいちゃん「大丈夫ですか?救助隊を呼びましょうか?」
無線「ズィーーーッだ・・めの・・・・どう・・・・る・・・プスッ」

じいちゃんは相手の声からただならぬ恐怖を感じ取った。
救助隊に連絡する事を決断した。昨日より高みにいたので救助隊とは簡単に連絡がついた。
救助隊は遭難届などは出ておらず、行方不明者の情報もないと返答してきた。
この時点での救助隊の出動は無理だが、ヘリの定期巡回で重点的に飛ぶと連絡してきた。
じいちゃんは自分で助けるしかないと考え足を速めた。

ようやく顔岩についた、さっそく無線で連絡を試みた。

無線 「ズィーーーーッ・・ど・・の・・・だめだ・・・・プスッ」
じいちゃん 「どこにいますか?」
無線 「ズィーーーッどこに・・・いる?・・・」
じいちゃん 「私はいま顔岩の東にいます」
無線 「ズィーーーッ駄目だ・・・引き・・いる・・・プスッ」
昨日より電波状況だ良くなった様だった。
じいちゃん 「事故ですか?」
無線「ズィーーーーッ助け・・・そわれて・・・プス」

じいちゃんは、はっきり「助けて」という意思表示を確認したので
正式に救助隊の出動要請を行なった。

じいちゃんは救助隊の到着まで探す事にした。
顔岩は谷間にあり、事故が起きてもおかしくない場所だった。
一通り、いけるところは探したが、結局何も見つからなかった。
じいちゃんは疲れたので岩に座りながら救助隊の到着を待つ事にした。

無線機でまた交信を試みた。

無線 「ズィーーーーれだ・・・・・プスッ」
じいちゃん 「聞こえますか?」
無線 「ズィーーーッ、き・・える。そばに・・る・・・プスッ」
じいちゃん 「声が聞こえるかもしれないので音を出しますよ」

登山用のスプレー式で大音量を発するもので音を出した
ファアーーーーーーーー!!!!!

無線 「ズィーーーーッ 聞こえた・・・プスッ」
じいちゃん 「良かった。どっちの方角から聞こえましたか」
無線 「ズィーーーッみな。み・・・プスッ」

南?おかしいぞ。南から聞こえたとするとじいちゃんの位置からは北ということになるが、ここから北方面となると谷が絶壁しかないはずだが。。。
そうこうしてるうちに、救助隊が到着し、じいちゃんは一部始終を伝え救助隊に引き継いだ。ひどく疲れたので予定は全て変更し、もう下山し帰路につく事に決めた。

帰りの途中救助隊と連絡を取ったが、いまだに発見できずとのことだった。
じいちゃんはあのバンドでまた交信を試みた。
無線 「ズィーーーッ き・・た、たくさ・・ん、プス・・・・」
その通信を最後にもう交信をする事は出来なかった。

結局、救助隊は生存者を発見できなかった。
数年後、仲間内から聞いた話では、顔岩周辺で無数の切り傷のついた死体が発見された。

山にまつわる怖い話36

シェアする