以前・・・もう、20年くらい前だろうか。
北アルプスの蝶ヶ岳に登って、とある山小屋に泊まった時の事。
夕食も終わり広間で酒を飲みながら他の客と歓談中に起こった。
数人が「尾根で誰かが迷ってるぞーっ!」と騒ぎ出したんだ。
自分も入れた周囲の者が其処へ行くと、確かに真っ暗な外の景色に1つのライトの灯りがフラフラとしてるのが分かった。
小屋の主人に伝えに行った者が戻ってきた早々に話すには、『また出たのか・・・あれは遭難者なんかじゃないから』と主人。
数人がライトを手に灯りの方へ小屋を出たのを見てたんだが、迎えが近付くと相手が遠ざかる。
声を掛けながら近付くのに、相手は一向に来ようとせず遠ざかる。
結局、出た連中が呆れた表情で小屋に戻ってきた。
「迎えに行っても来ないし、一体何なんだよ~(怒)」とね。
そこに主人が現れて皆にこう言ったんだ・・・
“ホラ!見て見てみな! 相変わらずフラフラしてるだろう? アイツはこの時期にいつも出るんだ。迎えに行っても決してこっちに来ようとしない。初めて出た時にゃ、オレが迎えに行ったんだ。でもこのザマだ。一晩中フラフラして、いつの間にか消えるんだよ”
最後にこう付け加えた。
“明日朝、灯りが居た場所を見てごらん・・・”と。
朝になり皆で「ソコ」を見て驚いた。登山道があると思い込んでた「その場所」はハイ松地帯で、人が通る道筋など何も無かった。
山にまつわる怖い話37