女の顔

10年以上も昔の話。

短大の裏手が、造成地というか山みたいになっていた。
木が鬱蒼と茂っていて、土が建物より大きく盛ってあったり。
「切り崩して作ったとはいえ、こっち側(裏手)は暗くてなんか嫌な感じだよねー」とよく生徒は話していた。

短大の建物群のうち、一番その裏山に近いのは講堂なんだけど、その講堂はすり鉢状になってて立派な作り。
天井が高く、一番後ろの席から講壇を見下ろすとはるか遠くって感じだった。

ある日のこと、何かの講義の終わったその講堂に居たんだけど、別の場所に座っていた数名が急にざわざわとしはじめた。
短い悲鳴や、やだっ!!という涙声、がたつく椅子、なんかとにかく異常事態が起きているのは明らかだった。
自分たちはその人達は顔見知りではなかったけど、どうもただごとではない様子に「なに、どうしたの?」と声をかけた。

集団の一人が「あれ…!」と指差したのは、講堂の天井の角。
そこに、女の顔が浮かんでいた。
生首が浮かんでいるという感じではなく、等身大の女の顔の写真みたいなものが、フワフワと薄くなったりはっきりしたりする感じで。

顔だけではなく、時には肩の辺まで見えた。
ショートカットで表情はよく見えなかったけど、目のあたりが黒かった。
自分は視力が弱いので眼鏡を手でクッとこらしてみたけど、確かに居る。

つーか、ある。怖さと言うより、なんなんだ、なんだアレ……という意識が先立ち、その場から動けなかった。
ざわざわしていると、壁沿いに少し移動していって、やがて消えた。

その1週間も経たない頃、裏の土を盛った山に全裸の女性死体が見つかるという事件があった。
絞殺されてたそうだけど、犯人が捕まったのかとか、今回の関連性とかについては全く知らない。

669 :ID:+IxAsj7l0

>>665
なかなかに凄い体験だなあ
エロ質問と思われるかもだけど、幽霊も裸だったの?

670 : ID:TUc7at4x0

>>669
首から下は見えなかったんだよねえ。顔だけが浮きあがってる感じで。
その亡くなった方と同一人物(?)かどうかもわからんし…。

自分だけが体験したのか、集団ヒステリーで「私も見える!」という連鎖になったのか分からなかったので、その場に居た人達全員ダッシュで講堂から出て、食堂に行って「今見えたものを描く」という事をした(余裕あるんだかなんなんだかわからんw)。

そしたら10人くらいいる全員が大体同じような絵だった…。
一人だけ、正面じゃなく少し斜めの図だったんだけど、その子は講堂の後ろの席から見てたので、どうやら写真のような平面ではなく3Dだったのだと推測した。

この話は短大時代の友人に会ったりすると「あれは思い出したくない」「その話やめよう」「ヒーやめてあれから自分寝こんだんだから!」となるのに、やっぱり誰かが口にしてしまう、定番の思い出話です。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 44

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