夕日に消えるまで

うちの会社のあるビルのエレベータフロアは、左側にベランダがあります。
周辺に大きな建物がないため、そこからの眺めはとても見晴らしがいいです。

去年の初夏だったと思います。丁度6時頃です。
久しぶりに定時で仕事を上がれたため、友人と二人で飲みに行くことにしました。
もうすぐ七月ということもあり、6時でも十分明るかったのを覚えています。

それでも日没が近いらしく、夕日がユザワヤの看板に沈んでゆくところでした。
フロアには西日が差し込み、影が長く伸びていました。
友人と二人、話しながらエレベータを待っていると、彼女の視線がベランダの外の方に注がれていることに気づきました。

「ねぇ…、あれ鳥かなぁ。」
いわれて振り向き、見ると、ベランダより遥か向こう、ほぼ真正面に位置する東急の看板の辺りを、看板のロゴとほぼ同じくらいの大きさの影が一列に並び、夕日の中を飛んでいるのが見えました。

しかし、それはよく見ると、鳥ではないのです。
どう見ても、二本の足で空をかけ、腕を振って走っている人間の列に見えました。
しかもこの距離から看板のロゴとほぼ同じ大きさということは、かなり大きな人間です。それが夕日が沈む方角へ、一列になって走っているのです。

最初はさすがにまさかと思い、信じられませんでしたが、兎に角鳥ではない事は確かでした。
しばし友人と二人、それらが夕日に消えるまで其処から動けませんでした。
結局、妙なものを見たおかげで気が殺がれてしまい、大人しく家路に着くことになりましたが、どう思い出してみても、あのときの影は人間だったと、二人で首を傾げていました。

ほんのりと怖い話18

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