100円

1か月くらい前の午後11時ごろ、駅で切符買おうとしたら二十歳くらいの男の人がススッと寄ってきて「100円で良いのでお金下さい」と言ってきた。

なんだこいつと思ってその人を良く見てみると、結構背の高い、ちょっと猫背ぎみだが、ジーンズに白いTシャツ姿の極普通の人だった。
私はなんて答えようか迷ってしまい、もたもたしているうちにその人は無視されたと思ったのか、居なくなってしまった。

そんなこともすっかり忘れていた昨日の夜、家の近くの自販機でジュース買おうとして100円玉を入れたが、何回入れても戻ってきてしまって買えない。

返却口から取り出して入れて、取り出して入れてをしばらく繰り返した頃、ふと、後ろに気配を感じた。
振りかえるとあの男の人があの時と全く同じように立っていた。
ちょっと猫背なところもそのままに。

驚いて声もでない私に向かって、
「その100円は・・・」
とだけ言うと掻き消すようにフッと消えた。

一瞬の出来事だったので私は気のせいと思い込む事にしたが、なんか気持ち悪いのでその100円はコンビニで使ってから家に帰った。

ほんのりと怖い話19

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