髪の毛

今から9年前のこと。

中学時代からの親友Aとその彼女B、俺、俺の彼女Cの4人でバス釣りにいくことになった。
当時俺は車を持っていなく、Aの車(白のパジェロ)でいくことになった。
その日はAとBが同棲をするための引越しを20:00ごろに片付け、引越しの手伝いのお礼に、とファミレスで夕飯をおごってもらい、一旦帰宅し準備後、夜中1:00に地元を出発した。

車内ではファミレスでの会計時にレジ脇に発見した「怖い話 富士五湖編」のテープを聞きながら順調に進み、3:00前には目的の富士五湖の1つの湖の周回道路に差し掛かっていた。
右側はガードレールでその先は湖に続く崖。左側には山が迫っており、落石防止の金網が張ってある。

そんな道のトンネルに指しかかろうとした瞬間
「ドーン」
車の天上から轟音が・・・・・

トンネルの中で車をとめるわけにもいかず、トンネルを抜けてすぐに停車。
車の屋根やボンネットを見てみるが何も落ちた形跡は見当たらない。

そんなとき左の崖上をフとみると白い霧のようなものがフワフワと上がっていくのが見えた。
「ん?」
と俺が思っていると親友の彼女Bも見ていたようで青ざめた顔で俺と視線をあわせる。
辺りがうっすらと明るくなってきたこともあり、「明け方に発生する霧だろう」と片付け一路目的の湖へと向かった。

湖へ到着し、夜が明けボート屋が開店すると俺達はボートに乗り、釣りを楽しんだ。
が、さすがに重労働&徹夜ということもあり、またボートの適度な揺れで眠気が増してくる。
そこで一旦車に戻って寝ようということになり、ボートを一旦返却し、4人で駐車場に向かって歩いていった。

「キャーッ」
最初に声を上げたのはBだった。
何が起きたか分かっていない他3人。Bは手で顔を覆い震えている。
Aが「B、どうした?」
Bは顔を覆ったまま声にならない声で「車の上・・・・」

俺が車のステップに乗り屋根の上を見てみると、そこには・・・
天上いっぱいにこびりつく長い髪の毛。

「うわ~っ」
恥ずかしくも声を出してびびる俺。何が起きたか分からないAとC。
地面が斜めになっているので、普通に止まっている状態でも車の天上は見える。
AとCも気がついたのかそれぞれの反応を示す。

その髪の毛は濡れた状態で天上にあったようで、日が高くなったその時間にはすっかり乾き、天上に張り付いていた。
相変わらずパニくっているBの介抱をCに任せ、コンビニの袋を手袋にしたAと俺でそのこびりついた髪をはがしては捨てる。

その日は当然これ以上遊ぶ気力もなくそのまま帰路へとついた。
(その車で帰ること自体気が乗らなかったが・・・)
帰りの車内は無言であった。(半分は寝てた、というのもあるが・・・)

次の日の夜、Aから「Bの様子がおかしい」との電話が入った。
同棲の準備はしていたが一緒に住むのはもうちょっと先とのことでBは実家に帰っていたのだが、AがBの家に電話をしたらBの母親から「体調が悪いようで蒲団に横になっているが蒲団にくるまってたまに何かブツブツいっている。何かおかしい」とのこと。
どうも、昨日のことがよほどショックだったらしい。

それからAと話をしたのは
・俺とBが目撃した白い霧のようなもののこと。
・天上に何か落ちた音がしたときには天上には何もなかったこと。
・昨日の髪の毛が何だったのか?
最後に「これからBの家にいってみる」とAが言い、電話を切った。

急に俺もCのことが気になりCに電話をかけてみるとあっさりと本人。
「眠い、日焼けが痛い、シミが怖い・・・」とのこと(笑)
まぁ、体調は悪くなさそうなので一安心した。

次の日。Bのことが俺も気になりAの家に電話をしてみるとAの母親から「昨日の夜、車で出かけた際に事故を起して入院した」とのこと。
俺との電話の後で出かけた際の事故のようだった。
入院先を聞き、急いでCと見舞いに行った。

病室に入った俺とCの目に映ったのはギブスに足を固め、頭に包帯を巻き、半分起きた状態で少年ジャンプを読むA。

俺「おい、だいじょうぶか?」
A 「おぉ、事故っちゃったよ・・・」

話を聞くとやはり俺との電話の後、Bに会いに行こうと車を運転してた際に事故った、という。

A 「車、廃車にしちゃったよ(笑)。まぁ、なんか気味悪かったしちょっと安心もしてる」
俺「どうして事故なんか起したんだよ」(Aは車の運転が好きで技術もそれなりにあった)
A 「なんかさぁ、あんまり良く覚えてないんだけどカーブでハンドルがきかなくなって『まずいっ』と思ったがブレーキもきかず、夢中でサイドブレーキを引いた。その後は病院での記憶しかない」

あとで親が警察から聞いた目撃者の話ではで中央分離帯に突っ込み、反動で車が横転した、とのこと。幸い夜中で交通量もそれほど多くなかったようで後続の車に突っ込まれるようなことはなかった、とのこと。

俺「で、Bちゃんはどうした?」
A 「俺こんな状態だから連絡も取れてないんだよ・・・」
C 「それじゃ、私が電話してみるよ」

AからBちゃんの家の電話番号を聞き、Cが電話をしに公衆電話へと向かった。
数分後戻ってくると「Bちゃん、これから来るって。びっくりしてたよ」
A 「体調は戻ったのか。あんなことがあったから何か幽霊みたいなのが取り憑いたのかと思って心配だったんだよ」
Aは笑ってそういってたが、ぎこちない笑いだった。

その後Bちゃんも見舞いに来て、話をしていたが寝込んでいた間は自分の記憶が一切ない、とのことだった。その日の朝に普通に目がさめて「丸一日寝てた」との認識らしい。
その日はそのまま解散し、俺達はそれぞれの家へと帰った。

その夜、入院中のAから電話。
「今日、あの場ではCちゃんがいたから言わなかったけど、事故る寸前にハンドルを握る別の白い手がたしかに見えたんだよ・・・・。正直あの車が廃車になってくれて助かった。次に乗ったら絶対ヤバイ。あの髪の毛も訳わかんないし。」

結局AとBは結婚しても、俺との付き合いは相変わらずだが、あの日の「髪の毛の話」はその後一切していない。

それから数年たってA、B、俺の3人でファミレスで食事をしているとき(Cと俺は既に別れていたw)、Aがトイレにいっている間にBが
「実はあの時ね・・・一日中外に何かが私のこと監視してたの。窓の外にずっといた。怖くて怖くて蒲団から出れなかったんだ。でもこれを話すとAが心配すると思って言わなかったんだけど・・・」

乱筆乱文、そして長くてすいませんが話は一切脚色ありません。
霊体験なんてめったにない俺にとっては怖かった・・・・

ほんのりと怖い話19

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