ハーモニカの練習

それだけじゃなんなんで不思議な話をば

もう一つ趣味があって、それが吹奏楽なんです。
とにかく吹きものが好きで、楽器にこだわらずなんでも吹く。
クラリネット、トランペット、篠笛、ハーモニカ、竜笛、尺八。
小学校と中学校が一緒になってるとこから子供に教えることを条件に借りては炭焼き小屋で吹きまくってる。

家だと家族や隣人に怒られるんよ。
でも、山の中で吹くトランペットは最高です。
崖の上から夕陽に向って吹いたりするとすごく気持ちいい。

秋口に炭を焼くついでに、ハーモニカの練習をすることにした。
しばらくこもって吹いてたら、急に雨が降り出してきた。
それも相当の豪雨。
しばらく待って雨脚が弱くなったら、帰るつもりだったがちっともおさまらない。

夜になっても降りやまないのでその日は小屋に泊まることにした。
幸いにもつまみがほとんどだったが食料はあったし、燻製に挑戦したくてもってきていた豚肉もあったので飢えることはなかった。

暇だったもんで延々と練習してた。
最期の上がるトコがちょっと難しくてそこだけ何度も練習していた。

朝になっても雨は降り続いていた。
少しばかり勢いは弱くなっていた。
することもなく昨日と同じようにハーモニカの練習をしていた。

ふと、ハーモニカの音が重なって聞こえた。

吹くのをやめると一拍置いて、音が途切れた。
誰かが合奏をしているようだった。
窓から外を見るが、誰もいない。
それにこんな天気なんだから外で吹くような変わり者もいないはずだ。
小屋にも隠れるスペースなんてない。

不思議に思いながらもまたハーモニカを吹き始めた。
やはり、音が重なって聞こえる。
少し怖かったが、半ば意地になって練習をすることにした。

最期のところでどうしても音が裏返る。
すると、リードするようにその音だけはっきりと何度も吹かれた。
外の音に合わせてそっとミを吹く。
1234のリズムが徐々に速くなっていき、1212になる。
合わせて吹いていると、外の何者かが最後の楽節の初めから吹きだした。
今度は俺から外の音に合わせて吹いた。
だが、やはりファからミが上手く吹けない。
失敗するとまたはじめから単音の練習から始まった。

そうやってしばらく吹き続けていると、ようやく失敗も5回に1回くらいになってきた。
大分吹いたな~と伸びをしながら外を見ると、雨はすっかりあがっていた。
時計をみると昼を少し過ぎたくらいになっていた。

雨でダメになったかと炭窯を覗くと、あれだけの雨でも湿気ることなくしっかりとできていた。
不思議に思いながら小屋に戻ると軽い昼食を取った。
食べ終わってからハーモニカを手に取り、また吹いたがもう外から音が聞こえることはなかった。

一体なにが練習に付き合ってくれたのかはわからなかったが、おかげで高音はだいぶ吹けるようになった。
次は低音の練習に付き合ってもらいたいのだが、それ以降音が聞こえることはなかった。

山にまつわる怖い話43

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