のぞき穴

実際に自分が体験した話、というか今現在も体験し続けてる話というか・・・
あまり怖くありませんが暇つぶしにでも読んでください。

就職で東京に引越して2、3ヶ月経ち、社会人としての生活にも少しずつ慣れてきた頃のことです。
ある夜、キッチンでインスタントラーメンを作っていると階段を上る足音が聞こえてきました。

自分の部屋は2階の一番手前の角部屋で、ミニキッチンのコンロのすぐ横に玄関ドアがあるため、キッチンに立っていると通路の足音がよく聞こえます。
また、部屋の壁に沿うように出窓のすぐ下に2階に続く階段があるため、階段を上る音は部屋にいても聞こえてきます。
当然、同じ2階に住む人は自分の玄関ドアの前を通過していくんですよね。

引越しの際近所に挨拶に行ってなかったのもあって、足音が聞こえた時ふと、どんな人が住んでるんだろう?と興味がわき、趣味が悪いと思いつつも玄関ののぞき穴から通路を見ました。
同年代くらいの茶髪の女性が通りすぎていくのが見え、「ふーん、普通っぽい人だなー」ぐらいに思ってすぐにラーメン作りを続けました。

それからというもの、キッチンで食事の支度をしていて階段を上る音が聞こえると、近所の住人への興味やちょっとしたスパイ気分というか、遊び半分でのぞき穴をのぞくようになりました。
小太りの男性、OLっぽい格好をした女性、タバコを咥えながら通路を歩くちょっとガラの悪い若い男性など、まぁどこにでもいそうな人達が住んでいるとわかり、次第に興味も失せ趣味の悪いお遊びは終わりました。

それからまた1ヶ月ほど経ったある日、部屋で寝ていると夜中にドン、ドン、ドンと階段を上がる大きな音が聞こえてきました。
「うるさいな」と思いつつもすぐ聞こえなくなるので特に気にはせずにいたんですが、そんな音がちょくちょく聞こえるようになり、夜中で寝ている時間帯だという事もありだんだんと気になるようになりました。

明らかに普通に階段を上る音ではなく、例えば折りたたみ自転車を一段一段階段に置きながら歩いている音、もしくはわざと一歩一歩足を叩きつけて階段を上る音、そう考えるしかないぐらい鈍く部屋に響く音でした。
当然面識の無い住人に嫌がらせをされる覚えは無く、管理会社に連絡するのもトラブルの元になるのではと思い仕方なく我慢するようにしていました。

そんな事が続くある日、仕事終わりに会社の先輩と飲みに行くことになり、家に帰ったのは3時を回った頃でした。
いつもは寝ている時間ですが、小腹が減っていたのでいつものようにキッチンでラーメンを作っているとドン、ドン、ドンとあの音が聞こえてきました。

酔っていたこともあり、外に出て行ってどうこうしようとまでは思いませんでしたが、玄関前を通りかかったらドアを蹴って驚かせてやろうと思い、のぞき穴から通路の様子を伺いました。
すると間近に顔が少し見えてのぞき穴越しに何かと目が合っていました。

驚いたというか、何がなんだかわからず「え?」って感じで固まってしまいました。
近くてよくわからなかったんですが、子供の目だったように思います。
敵意みたいなものはなく、ホントに子供がいたずらで覗き込んでるような。
まるでこちらの様子を伺うように。
次の瞬間はっとして、これはヤバイと思ってすぐ部屋に戻りました。

ドアを叩く音がするわけでもなく、呼び鈴が鳴るわけでもなく、ただ部屋の扉を閉めても扉越しに視線を感じる気がして、TVをつけてとにかく怖さを忘れようと必死でした。
その日は結局一睡もできず、夜が明けてくるにつれ少しずつ落ち着いていきました。
何だったんだろう?と考えてもわかるわけもなく、ただドア越しに見た目が強く印象に残っていました。

何というか、例えば自分が興味本位でのぞき穴から通路をのぞいていた時、そんな目をしていたんだろうな、と思いました。
何をしてやろうというわけでもなく、ただ、何がいるんだろう?という興味心で。
そう思うと何故かぞっとしました。

よくTVで霊が出る家に住む人なんてやってるけど、そういうのを見るたびに「そんな家よく住めるなー」なんて思ってましたけど、今はよくわかります。
仕事やお金のこともあり、引越しなんてそう簡単にはできず、取りあえず何か自分の身に危険が起きているわけでもなく。
共存っていうのも変ですが、こればっかりはどうしようもないことなのかなと思うようになりました。

結局アレが何なのかは今でもわからないし、はっきりさせようとも思いません。
今でも定期的にあの音が聞こえてきます。
ただ、いつものように少し我慢すればすぐ聞こえなくなる音です。
絶対に自分から干渉はしない、それさえ守ればきっと向こうも干渉してこないと、何の保障もありませんが、あの目を見たからでしょうか?何故かそう確信しています。
気をつければいいだけだと思ってます、絶対に出会わないように。

ほんのりと怖い話25

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