現実の彼

高校生の時、同じクラスの変な男子(クラスに必ず一人は居る感じの)に付きまとわれたことがある。
クラスのほぼ全員が一度は彼をいじめてたんだが、私はそうしなかった。何となく乗り気じゃなかったから。

で、ある日から彼が急に擦り寄ってくるようになったというか・・・「○○ちゃんだけが俺の味方なんだよね」「○○ちゃん、俺のこと好きなんでしょ?」とか言って何かと近づいてくるようになった。

いじめには加担してなくても、逆に優しくもしてなくて、何で彼がそんな風に言うのかわからなくて怖かった。
そもそも可愛くないし。

それから暫く経った日の朝、通学路で彼と出くわした。
既に住所は割れてたわけで、その前も度々待ち伏せみたいなことがあったから「またか」くらいにしか思わなかった。
でも彼はいつもみたいに「○○、迎えに来たよ」ってにやにや笑ってなくて。
いきなり「好きだ」と言いやがった。
「嫌だ無理」って反射的に返してて、逃げようと思ったところで目が覚めた。

自分の部屋のベッドの上に居て、ちゃんとパジャマ着てた。夢で良かったーと思いつつ準備やらを済ませて登校。

夢と同じ位置に彼が居た。
クソ真面目な顔してこっちに来る。正夢だったみたいで、彼に「好きです」と言われた。
「今日友達と待ち合わせしてるから、急ぐんだ。ごめん」って言ってまた逃走。

目が覚めた。また夢だった。
気持ち悪いなぁと思ったけど、それだけで欠席するのもアホくさくて家を出た。
でも案の定居た。

「好きだ」、「ごめん」、逃げる、目が覚める。10回くらい同じ繰り返しがあったよ。

次に起きた時、どうしていいか分からなくて泣いてしまった。
確かに怖かったけど同時にかなりイラついてて、どうせこれも夢だろうから・・・ってことでパジャマで外に特攻。

んで、其処に居る彼の胸ぐら掴んで泣き喚いた。
「ふざけんな」とか「何なんだよ」とか「いい加減にしろ、覚まさせろ」とか、寝癖ついた髪で鼻水たらしてパジャマ姿で。
思いつく限りの文句を言ってたんだけど、それも尽きてまた静かになった。
彼はぽかんとした顔で私を見てて、でも暫くすると「ごめんなさい」って頭下げてきた。

「これまで俺をフってたの、愛情の裏返しじゃなかったんだね。ごめんね、○○ちゃん。もう大丈夫だからね」みたいな事を俯いたまま喋ってた。

もう覚めなかった。格好が恥ずかしくて死ぬ気で家に走った。
夢で言われただけなのに、現実の方の彼に文句言って悪かったなーって後悔してたんだよ。今までずっと。

最近、あの時の彼の台詞が変だってことに気付いた。それまで一度も彼から告白されたことなかったから。それに、あの時は「好き」と言われる前に掴みかかってた。
誰に言っても「どうせそれも夢だろw」「夢オチwww」と言われるが、ほんとに怖かった。

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