神社の前の川の淵

我が町の山深いところに蒼前神社というのがあるが、その神社はある川の淵の前に立てられている。

昔、この淵の傍で仲のよい兄弟たちが遊んでいたところ、突然淵から怪物の手が出て、兄の方をあっという間に淵へと引きずりこんでしまった。

弟の方が泣きながら家に帰って両親にこのことを伝え、すぐに村人総出で兄の救出作戦が始まった。
しかし、農民だけではなんともしがたいので、すぐに隣町から川漁師を呼んで潜らせることになった。

逞しい川漁師が淵に潜ると、果たして川底に正座している兄を見つけた。
数度の挑戦の末に兄を漁師が引きずり上げると、兄の体は怪物に襲われたとは思えないほど綺麗な顔をしていた。
まさか生きてるのではないかと皆がざわついた瞬間、両親はわっと泣き崩れた。

兄の口には、体が浮かび上がらないようにと、川石がぎっちりと詰められていたのだという。

山にまつわる怖い話48

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