聞いた話なんだけど結構怖かった。
友人Aの借りてた部屋は一階の一番端、すぐ横にはOLらしき女性が住んでいた。
で、そのOLさんはAの事が好きだったらしい。
明らかに色目使ってきたり、何かと訪ねて来たりで、露骨という恋愛下手って感じだったそうだ。
彼は、なんとも思ってなかったが……というのは、そのOLさん、えらく痩せてるし青白いし、綺麗ではなかった。
そもそも、彼が引越して来た当初は「病気で療養でもしてんのか?」と思っていた。
働いている様子が無かったからだった。それに、あの青い顔……と思うと気の毒にこそ思えど、恋慕とは程遠い。
しかし、暫くしてから働き始めたらしく、きちっとした格好の彼女と朝も度々会うし、帰りもはち合わせる事が会った。
ウマが会うと言うわけじゃないが、まぁ、よい隣人間系だったとか。
しかし、その女性は日に日に衰えている様に見えた。
心配にはなっていたが、夜は良く笑い声が聞こえてきたから取り立てて心配はしなかった。
ところが、ある日を境に姿を見なくなった。
一週間程すると異臭がした。管理人と共に見に行くと死んでいた。餓死であった。
死体とその部屋の組み合わせに彼はゾッとした。
部屋に備え付けの家具や何かは全て取り払われていた。床板もなく、壁はバリバリに壊れ、彼の部屋のクローゼットが背を見せていた。
そこには一面に彼の似顔絵らしきものと陰毛が張り付けられていた。多分、古風な恋のまじないだろう。
彼女は仕事等していなかった。彼の気を引く為にさもしている風に見せ、快活そうに何もない部屋で笑っていた。
収入は手持ちの物を売ってまかなっていたのだ。だから彼女は水と少々の食べ物で食い繋いでいた。
彼女は「ゆいごん」と書いた染みが滲んだ紙を持っていた。裏に「Aさん」と書いてあるだけで内容はなかった。
なんで彼がそんなに好かれたのか、なんで仕事しなかったのか知らないけど、何となくゾッとした話。
ほんのりと怖い話31