清人の声

あんまり怖くないけど、当時高3だった俺が体験した実話。

もう季節は冬に入ってたと思う。
だから受験目前のため、昼休みになると、参考書もって図書室で勉強してた。
だけど、同じく勉強しに来た先客たちに場所取られて勉強するスペースがないこともしばしば。そういう時は化学室とかで勉強。

そんなある日、その化学室で、ラジカセがあったの見つけたのね。 どこで見つけたかと言うと、窓際にある手洗い場の下にある場所…分かりやすく言えば水道のパイプとか見えるとこに隠れるようにあった。
何となく視線を床に落とす時に目についたから、とりあえず取り出してみたわけよ。

たまにはラジオ聞きながら勉強するのも悪くないなぁ…とか思って、とりあえず取り出したのはいいけど、長年放置されてたせいで、すごい汚れてる。
ちなみに学校じゃおなじみの黒いラジカセ。

手洗い場にあった雑巾で乾拭きして、コンセント繋げてみた。
スイッチをラジオに合わせ、周波数をいじるが反応なし。
やっぱり壊れてるようだ。

元あった場所に戻そうとすると、カセットが入ってるのに気付いた。
題名を見ると『清人の声』と走り書きしてある。
何だ??…と思いつつ、再生ボタンを押すと、今まで何の反応もなかったのに、普通に再生された。

何かの声らしき音が聞こえるんだけど、よく聞き取れない。ボリュームをマックスにしても故障してるのか音がでかくならない。
思わずラジカセのスピーカー部分に耳を押し当てる。
聞いてるうちに、音の正体が分かった。お経だ。

――化学室は、北側の長い廊下の隅に位置しており、昼間でも薄暗い。
また普段は使われていない部屋で、教室や図書室、職員室がある棟とは別の棟にある。
それをいいことに静かで勉強出来ると思い、俺が勝手に無断で拝借してるのだ。
だから部屋には自分1人しかいない。――

自分の置かれた状況を考えながら、直感的にやばいと感じた。
何かが来る!!第六感が働いた瞬間、勉強道具もそのままで教室まで猛ダッシュしました。

結局、その日は参考書を怖くて取りに行けず、次の日に友達連れて参考書を取りに来たのだが、なぜかラジカセが消えてた。
最初に見つけた場所にもない。
参考書はそのままの状態で放置されてるのに…。

未だに不思議な出来事として強烈に記憶に残っている。
もし、あのままずっとあのラジカセのお経を聞いていたらどうなってたんだろ??

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