こうならなくてよかったね

急に昔の話を思い出した

いつの頃だったかはよく覚えてないけど、小学生の頃だから十年は前。
お爺ちゃんの知り合いから、ある人形を貰った。
人形劇なんかで使う、上から糸で吊るして動かせるやつ。
当時の自分は動くのが面白くてよく適当に動かしたのを覚えている。

遊び続けるうち、俺はその人形の声みたいなのが聞こえるようになっていた。
その人形とは他愛のない話ばかりしていたけど、大事な出来事の直前にはよく教えてくれていたからすごく大事にしていた。

ある日、いつものように人形を動かしながら会話していると、人形が突然「そろそろいかなきゃ、ごめんね」と言った。
俺は泣きながら行かないでって頼んだけど、人形は頑なに「いかなきゃ」と言い続けた。

その言い合いをしているうちに、人形は「いまはなさいとこうかいするよ」とだけ喋った。
その一言が妙に怖くて人形を吊るしていた棒から手を離すと、人形は床に吸い込まれた。
消える瞬間に「こうならなくてよかったね、いままでたのしかったよ」とだけ聞こえた。

夢だったらそれで良いんだけど、親なんかはその人形で遊んでいたことを覚えているし、「昔はよく予知してたよね」なんて言われることがあるから事実だと思う。
それと、人形が最後に言った「こうならなくてよかったね」ってのが、思い出す度に気になっている。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 65

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