光る物体

最近まで、あまりに不可解な出来事で夢だと思い込んでいた事がある。

俺には兄がいる。お互い家を出ているから、今年の正月、実家に年賀の挨拶で集まり、久々にあった。

その時に、なんとなく思い出したように「俺が中二の頃、こんな夢を見たんだよ」とその話をすると、兄貴が「それ夢じゃなくて現実だよ。俺と一緒に見ただろ」と言われ、今まで自分が夢だと思い込んでいた事に驚いてしまった。それはこんな光景だった。

夜の9時頃、俺と兄は俺の部屋で話し込んでいた。何の話題をしていたか覚えてない。
その時ふと、窓から光が差し込んでいる事に気付いた。うちの実家は都内のマンモス団地で、俺の部屋はベランダ寄りにある。ちなみに階数は12階。

「外で何か光ってる」とベランダを見ながら兄に言うと、「そうだな」と兄も窓越しにベランダを見つめる。

すると、変なものが見えた。うちの団地の30メートル先には、同じ形をした横長の団地がもう一棟建っているのだが、その団地の2、3メートル手前を光る物体が右から左へ浮遊しながら移動している。

「なんだあれ」と兄と目を凝らしてみると、その物体は人の形をしていた。人ではなく人の形をした何かだった。棒人間とでも言うのだろうか、昔のテレビゲームに出てくるようなドットで描いた人のようだった。

そいつが向かいの団地の12階の高さの空中を全身から光を発しながら、走るように移動している。「走るように」とは手足を陸上ランナーの振り上げているのだが、動いている速度が歩いているのと変わらないからだ。

二人で呆気にとられて、その光景を見ていると、そのうち視界から消えた。
我に返り、急いでベランダに出たが、もうそれは忽然と姿を消しており、いつもの夜のベランダの景色が広がっているだけだった。

今でも、あれが何だったのか想像もつかない。電飾をつけた全身タイツを着た人間だったのではないかと言われれば、そんな感じがしないでもないが、空中を歩いている時点で人間じゃない。

余談だが、それが起こる1週間ぐらい前の夜中、親父と帰宅した時に上空に浮かぶUFOと思わしき、楕円系の光源を見た。左右に微妙に揺れながら、宙に停止していた。
急いで家に入り、双眼鏡を持って外に出たら、もう消えていた。
実は、これも夢だと思っていて、この話をしたら、親父に「一緒に見ただろ」とつっこまれた。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 69

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