カチャン

埼玉北部K市で新聞配達をしてたことがある。
ときどき不思議体験をしたが、そのひとつを。たぶん怖くない。

新幹線高架沿いのマンションで朝刊を配っていた。
こういった集合住宅では普通上階から入れてゆく。
できるだけ最短となるように、EV、非常階段などをうまく使って、一筆書きとなるようなルートで走っていくわけ。

3階まで来たとき、上のほうで「カチャン!!」という金属音が響いた。
妙に甲高くてちょっと驚いたんだ。でも早起きしたり夜通し起きてた読者さんが、投函直後にドアポストから新聞引き抜くことはたまにあるので、
「早起きなこってす。毎度どーも」
という感じで配達を続ける。

と思ったらまた「カチャン!!」 一瞬からだの動きが止まった。
まぁ、同一物件で2軒くらいまでなら、ごく稀にあること。
「もっと静かに抜けば良いのに。破れるぞ」などと思いながら続行しようとすると
「カチャン!!」「カチャン!!」

・・・・・え?
。。しかもさっきより少し近くないか?
そういえば最上階に入れているのは2軒だった。
その下階には数件連続で入れていた。
「カチャン!!」「カチャン!!」

この物件は、いつもうちの新聞が一番早くに入れるので、抜かれる新聞は俺が入れたもののみだ。
「こりゃあ、住人じゃなくて誰かがいたずらしてるんだな」
事実、そういう前例がある。新聞が届いてないと苦情を受けるのはこっちだ。
ここで待ってて捕まえてやろ。そう思った。

「カチャン!!」「カチャン!!」
音の方向からして、完全に俺のルートを追ってるわ。と思ったところで妙なことに気づいた。
俺のルートどおりなら、廊下の両端にある外付け非常階段を必ず通り、鉄製のそれが絶対に音を立てるはずなのだが、一切しない。

ゾワッときた。
「カチャン!!」が真上に来たが、足音・気配いっさいなくしかも速い。
「カチャン!!」「カチャン!!」
もしかしてソレ系?と思いつつも、犯人がいるならとっちめたいという職務上の正義感から我慢して階段の方の様子を見ていると、唐突にこの3階から音がしてきた。

「カチャンカチャンカチャン!!」
さっき入れた2軒となりの部屋の新聞が、内部にシュルッと引き入れられるのを見た。
それでとまった。沈黙。
住人みんなで俺をからかおうというのか。流れ的に、今俺のすぐそばに何かがいるかもという予感を拭いたくて、そう考えた。

ふと今俺が入れようとしていた宅の扉(EVの扉と向かい合ってる)を見ると、両脇に盛り塩と御札らしきものがあって、言い訳が思いつかなくなって怖くて配達放棄、後回しにして逃げた。

2004年の秋ごろ。日本語へたでゴメン

ほんのりと怖い話43

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