どっから来た

K市のバイパス外側は広大な田園地帯で、田んぼと空き地が多く家はまばら、ぶっちゃけ寂しい。
家が少ないんだから読者も少ないわけで、その分担当区域の面積が広がる。
カブに乗って、AM3:00~6:00くらいの間に70km以上走りつつ配達しなけりゃならない。
広い分、不気味なところも多くかなり変な体験もした。
しかしいずれも俺一人の体験だから信憑性に欠ける。
怖くも長くもないが、目撃者がいる話を。

前述のようにシビアな区域なので、新規や試読の家でもあれば、事前にゼンリンの地図などで念入りに調べておく。これ大事。現地は大概まっくらだから、頭に地図叩き込む。

その時の新規さんのお宅のまん前に、地図上では寺と林だかなんだかの土地に挟まれた抜け道のようなものが曖昧に表記されていた。
ちょっと怪しいが、これ使わないとひどい遠回りになるので、とりあえずそこにアタックしてみることにした。

飛ばしまくって、やっとこさ件のところに。
今いる道と平行に走る道が、寺の向こう側にあって、そんでどうも目当ての家らしき黄色い明かりが、擁壁っぽいのに挟まれた隙間の向こうに見えた。これが抜け道か。
明かりは他に無くて、道もどうやら舗装されてないみたいで不安ではあるが、何しろ急いでいるのです。突っ込んだ。
木の枝でも垂れているのか視野が暗くなりはしたがすぐに出た。小奇麗な一軒家に朝刊を入れ、またカブにまたがろうとすると、ちょっと離れた家の前で、他の新聞屋が二人(たぶん引継ぎのために順路教えてたんだろ)、面食らった感じでこっちを見て立ってた。

横を通り過ぎようとするときも露骨にこっちを目で追うので、「なんかありました?」と尋ねたら、おっさんの方が
「・・・あんたどっから来た・・・」
は?

「市内の○○新聞の店ですけど、何か」
「違えだろっ ほら」
「出身なら東京ですけど」

せっかちな俺が答えてると、おっさん指差してる。
その先にあるのは、5、6段積みあがっただけのコンクリートブロックの壁。
おっさん怒ったように「ほらぁ!!」と言い、指差しながら壁に向かってゆく。
どこまで行くんだと見てたら、さっき入れたお宅の前まで歩いていった。
そこで気づいた。さっき通った俺の道が無い。

「は!? あれ? これ!?」
仕事モードのときの俺は、驚きこそすれ恐怖・ショックは薄いので、躊躇せず壁の向こう側を覗く、貧相な墓だか碑だかがランダムに立ってた。
おっさん「おいやめとけっ、なんか化かされてるんと違うか、さっさと行こうやもう」

お互いどういう状況だったのかを教えあうまもなく二人は去って、俺も仕事モードだったので特に違和感無く配達続行。飛ばしてる間の事故のほうが現実的に怖かったので、すぐにさっきの恐怖感は無くなった。

昼間来てみると、墓のほうへの道が半分くらいあるだけで開通してはおらず、古墳みたいなこんもりした盛り土や、擁壁なんかも無かった。
寺は廃寺って感じで、絶対近づきたくない雰囲気。念のため失礼の無いように碑などを確認したが、大してヒントになるようなものは無し。
そのお宅は1ヶ月で止まったので助かった。

ほんのりと怖い話43

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