小学生の時、家族で山にハイキングに行った。
天気は曇天で、快晴ではなかったが、姉とはしゃぎながら山登りをし、頂上でみんなで弁当を食べ、一日を楽しく終えた。
父はその道中を8ミリビデオで撮影していた。
後日、その撮ったビデオを見ようと、家族みんながリビングに集まった。
山頂に着く手前に、少し木が多い暗がりが続く道があったのだけど、そのシーンに妙なものが映り込んでいるのに気付いた。
それは辺りの木と比べても3メートル近くはあろうかという人間で、両指?が何本にも分かれてまるで触手のように動いていた。
これ何?と自分が家族に言うと、みんなも不思議そうにして、食い入るようにビデオを見ていた。
そのまま少し見ていたら、最初に姉があっ!と声を上げた。
自分もすぐに分かったけど、信じられなかった。
その人間の触手が、いつの間にか子供を一人捕えていて、そのまま画面からフレームアウトしていく所までが、ぼんやりと映っていた・・・。
暫く全員無言のままだったけど、父がビデオの停止ボタンをそっと押した。そのまま解散。
自分と姉は部屋に行き、あれに付いて考察したがまともな結果は出なかった。
かなり後で母に聞いた事だが、あの後すぐに山の管理者に、行方不明者がいなかったか、とそれとなく尋ねたらしい。
そういう報告はなかった、との事だった。
新しい機器が増え、8ミリビデオが見れなくなってからは、例のビデオテープは押し入れの中に封印されたままだ。
未だに食卓などでこの話題が上がる事もあるが、誰もあれが何だったのかまともに説明できないでいる。
山にまつわる怖い話56