子供のころ埼玉ちかくの団地に住んでたんだが、どういうわけか、よく迷子が入り込んで保護されてた。
うちの父も幼稚園くらいの女の子を保護したことがある。
ある棟の2階部屋の前でシクシク泣いてたんだそうな。
その子が言うには「ピンポン押しても入れてくれないの…」。
親父はぞっとしながらも、その子を諭して警察に連れていった。
だってその部屋、誰も住んでなかったから。
自分が住んでたころ、その団地はもう過疎ってて、件の部屋がある別棟は無人だったらしい。
迷子は団地の子じゃなくて、みんなばらばら。
中には他市の子もいたみたい。
自分も一度その棟の階段で遊んでたら、親父とおふくろにめちゃくちゃ怒られたことがあって、その話はずっとタブーだった。
3年ほど前、親父にそのときの話きいたらやっと口を開いてくれた。
その子は「悪い子は入れてあげない、いい子にするか」とインターホン越しにずっと叱られてベソかいてたらしい。
で、親父がその子を連れて行こうとした時、「インターホンがブツって切れる音がした」…。
迷子たちもなんで自分たちがこの団地に来たのか、よく分かってなかったみたい。
中には保護されなかった迷子もいるんじゃないの?って聞くと、親父は顔をしかめてたけど。
不可解な体験、謎な話~enigma~ 70