ドア向こうの相手

子供の時の事、当時、社宅住まいだったのだけど、そこの玄関ドアののぞき穴は直接目をつけてのぞかなくても、スコープの写した映像を拡大表示する四角い窓みたいのがついてた。

昔だったので、幼稚園から帰って母親が社宅の寄合とかで呼ばれると一人で留守番してた。
そう言う時に、時々玄関がノックされて、スコープに手が映ることがあった。
いんじゃんほいっ!と子供の声がする、けど手は子供の手っぽくない大きい手に見えた。

いんじゃんほい、いんじゃんほい、と繰り返すのでドアのこっち側でグーチョキパーを出して応戦する。
何度かやって、こっちが勝つと手は消えて声も黙って、そのうち母が帰ってくるのがお決まりだった。

あるとき、何度やっても勝てなくて相手が帰ってくれなくて、いい加減疲れて飽きたので、もうやめーと言ったところ、子供の声があーけーてーあーけーてーと二回言った。
思わずいーやーよーと返して、こっちからいんじゃんほい!と勝負に戻して何とか勝っていつものパターンになった。

母が帰宅したら自分が玄関でへたり込んで熱出してたんで焦ったらしい。
その後しばらくして、父が転勤になってその社宅とは離れた。

不可解な体験、謎な話~enigma~ 74

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