小学六年の夏の話。
俺の小学校にも「七不思議」というよくあるアレがあり、メンドいんでリストアップはしないがとにかくそれを一つ一つチェックしてやろうと言うことになった。
何せ夏休み。ヒマはたっぷりある。
ただ、七不思議であるからには「夜」チェックしないと意味がない。
校内への侵入経路は現地で探すとして(小学生らしい無計画さ)
小学生だった自分達にとってのネックは「夜、どうやって家から抜け出すか」だった。
俺は放任主義というか何と言うか、夜抜け出して散歩に出たりしても咎められない家だったからいいとして、問題は他の二人である。
まずA。Aは団地の4階に住んでいるため、窓から抜け出すのは不可。
おまけに両親二人ともが物音や気配にめっぽう敏感らしく、就寝後、こっそり漫画など読んでいると察して部屋に入ってくるほど。
次にB。Bは門から玄関まで多少距離のあるような家に住んでいた。つまり金持ちである。
当時からセコム的なものを導入しており、よくわからないがBの姉が深夜家を出ようとしたら通報されたらしい。
色々考えたが、小学生にうまい知恵の浮かぶはずもなく「とにかく頑張って集まる」と言うことで話は終わった。
そして夜。学校の裏に午前0時集合。30分待って来なければ突入。
結果から言うと、三人とも集まったが、学校への侵入ルートが見つからず、あきらめて近くの墓場を散歩して解散した。
問題はその翌日である。
深夜、Bの家に強盗が入ったらしい。
父が重体、姉と母が軽傷。Bはその時いなかった。
それからBとは会えなくなり、夏休みが明けても二ヶ月ほどBは来なかった。
やっと来たと思ったら転校するとの事。
先生に付き添われて朝の会にやってきて、転校する旨を言い、社交辞令的な挨拶と鉛筆を配って終わり。目が合わなかった。俺は正直恐ろしかった。
まず、二ヵ月半ぶりに見たBの顔が別人のようになっていたことが怖かったんだが、それ以上に、七不思議探検なんて言い出さなければ、と言う根拠の無い罪悪感があったからだ。
ただ、今思うと、Bの家に強盗が入ること自体は避けられなかったとしても導入していたらしいセキュリティはどうなってたのか。
Bは家を抜け出すにあたり、どうにかしてそのセキュリティを切ったんじゃないか。
そのせいで強盗が入ったんじゃないか。そうなると、やはり自分にも責任の一端がある。
まあ、Bはセキュリティとは無関係に抜け出したのかも知れないし、セキュリティ自体が切るとか切らないとかいうもんではなかったのかも知れないし、強盗にしたってセキュリティ関係ないような入り方をしたのかも知れないし、全てはわからないんだが……。
ほんのりと怖い話46