帰省

俺の実家は両親と弟が住んでて、俺は盆とか正月になると毎年帰ってた。

ある年の正月、いつもは車で帰るけど車の調子が悪くなり電車で帰る事にした。
着いたのは車の時よりずっと早い時間で昼過ぎだったと思う。
駅から徒歩15分位離れた住宅街に家はあったのでのんびり歩きながら帰った。

年に数回帰ってるため、景色はそう代わり映えしなかった。
家に着いてインターフォンを鳴らして扉が開くのを待った。
鍵は持ってたけど家には家族がいるはずだったから。

「はい」インターフォンからは聞きなれない声。
あれ?そう思ったけど、とりあえず「ただいま俺。」そう答えた。
「どちらさまですか?」今度はインターフォン越しでも分かった他人の声。
そのまま数歩下がり、門扉の表札を確認した。

「○○」
俺の苗字は「△△」
聞いてるかはわからなかったけど、玄関に向かってすみません!そう叫んであわててきた道を戻る。

わけが分からないまま駅に戻り、携帯から弟にかけた。
そしてそのまま、今駅に着いたけど疲れて家まで帰れないから迎えにきてくれるように頼み、駅で待った。
10分もせずに弟の車がロータリーに入ってきて、そのまま車に乗って実家まで戻った。

車は俺のよく知る道を通り実家についた。さっき歩いた道は何故か思い出せなかったけど間違っていたことだけは分かった。
赤ん坊の時から暮らしていた家を間違えたなんて馬鹿なこと、弟にも言えずそのまま正月を過ごした。
正月休みも終わり、俺は大学に戻った。

友達のAを見かけて声をかけた。相手は不思議な顔をしてそのまま通り過ぎる。しばらく歩いていると後ろから声をかけられた。
顔を見るとAだけど、さっき俺が声をかけたのAの顔じゃない。というより、さっき声をかけた相手がAじゃないと気づく。

全然、似てさえもいなかった。俺は入院した。

ほんのりと怖い話46

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