まだあるから

知り合いの話。

仲間と二人で、冬山でのロッククライミングに出かけた時のこと。
天候が急に崩れ、岩棚の途中で数日足止めを食らった。
これは危ないかなと弱気になっていると、同行した仲間がさらりとこう言った。

大丈夫、俺の寿命はまだあるから、ここは生還できるはずさ。

どういうことかと問うてみた。
聞くと昔、彼は山で出会った何者かに自分の寿命を教えてもらったのだという。
それの正体が何なのかは分からないが、彼自身は不思議と信じているのだと。

次の日には吹雪は止み、彼らは怪我も無く下山できた。
彼の寿命がいつなのかということまでは、さすがに聞けなかったそうだ。

山にまつわる怖い話4

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