知り合いの話。
彼のお爺さんは炭焼きをしていたという。
ある寒い夜、窯の前で火の番をしていると、闇の中から声がかけられた。
寒いから、そちらへ行っても良いか。
里の者だろうと思い、いいよと答えると見慣れぬものが姿を現した。
それは大人ほどの大きさで、全身が黒い剛毛で覆われていた。
目鼻さえ見てとれぬ顔を見て、腰を抜かしかけたそうだ。
ああ、やはりそうだ。お前も俺が醜いと思うのだな!
それは哀しそうにそう叫ぶと、背を向けて山の中へ逃げていった。
お爺さんは終始口を開くことができなかったそうだ。
山にまつわる怖い話4