知り合いの話。
彼女の実家は、山奥にある過疎寸前の集落なのだそうだ。
先日法事のために、久しぶりにそこに帰った時のこと。
町育ちの彼女は山が珍しく、家の周りの山道を歩き回っていた。
荒れた細い道の傍らに小さな祠があり、中には五つの地蔵さまが並んでいた。
お地蔵さまが寒そうに見えた彼女は、自分の毛糸の手袋で小さな帽子を作り、二つの頭にかぶせたのだという。
それから十分くらいして、帰りにまた祠の前を通りがかった。
誰がしたことなのか、他の三つの地蔵の頭にも帽子がかぶさっていた。
大きな蕗の葉っぱで作ってあったらしい。
彼女の気のせいか、なんとなく地蔵さまの顔が得意気に見えたという。
次の日、彼女は新しく五つの帽子を作って持っていったそうだ。
山にまつわる怖い話5