赤トンボの群れ

友人の話。

一人で秋の山野をハイキングしていた時のこと。

午前の爽やかな空気の中、草原をゆったりと歩いていたそうだ。
彼の目の前に、赤トンボの大群が姿を現した。
次の瞬間、彼はトンボの群れに包まれてしまったという。
右も左もトンボしか見えず、彼らの羽音しか耳に聞こえなかった。
ひどく幻想的な情景だったと彼は言う。

唐突に赤トンボの群れは過ぎ去り、あたりを見渡した彼は驚いた。
見事な夕焼けが目に入ったからだ。
トンボに包まれていたのはわずかな時間のはずなのに、半日以上の時間が過ぎていた。
「虫も人を化かすことがあるのかな」彼は不思議気にそう語ってくれた。

今、その草原は切り崩され、大きな大学が建設されている。
トンボもその数をすっかり減らしてしまったそうだ。

山にまつわる怖い話6

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