知り合いの話。
彼は写真を趣味にしていて、何度かコンクールで賞も取っている。
春先に、ある高原で撮影していた時のことだ。
花一面の高原を見ていると、どうしても人の姿がほしくなった。
たまたま居合わせたカップルに、花をバックにしてモデルを頼んだのだという。
若い二人の笑顔に、自分でも良い写真が撮れたという自信があった。
写真の送付先を聞いて別れたそうだ。
家に帰り、写真を現像した彼は言葉を失くした。
二人の写真には一枚残らず、そこにあるはずの無い物が写っていたのだ。
二人の背後に、大きな黒い鳥居が浮かび上がっていた。
写真は失敗作ということにして二人に謝ろうとしたが、教えてもらった連絡先の電話は不通になっており、出した手紙も送り先不明で返ってきたという。
彼は今でも二人のことを心配している。
山にまつわる怖い話7