友人の話。
夜中に車で帰宅していた時のこと。
起伏の激しい峠に差しかかった所で、いきなりハンドルが取られて車が横に流れた。
まるで地面自体がずるずると滑り始めたような感触を受けたという。
幸いスピードは出していなかったので、無事に路肩に止まることができた。
振り向いた彼の目に映った路面は、まるで墨を流したかのように真っ黒だった。
油でもこぼれているのか? 確認しようと外に出ると、いきなり黒い路面が波打った。
そのまま道向こうの繁みの下へ吸い込まれていく。
まるで黒い絨毯が巻き取られていくように見えたという。
黒色がすべて繁みに消えると、すぐにガサガサという音がして遠ざかっていった。
我に返った彼は、車に飛び乗り逃げ帰ったそうだ。
山にまつわる怖い話7