友人の話。
渓流釣りの仲間に、穴場のポイントを教えてもらったのだという。
そこはそれほど深くない山中の沢で、実に釣り心を刺激する場所だったそうだ。
近くに車を止められる広場もあり、足の便も申し分なかった。
形の良い鮎を何匹か釣り上げた後、ふと誰かの視線を感じた。
土手の上を見上げると、そこに灰色の人影が三人、じっと佇んでいた。
逆行でもないのに、表情などは伺えない。
理由は分からなかったが、非常に嫌な感じがしたそうだ。
その時友人が怒ったように口にした。
「まじまじと見る奴がいるか。無視しろったら!」
慌てて目を逸らすと、土手の向こうに煙を上げる高い煙突が見えた。
急に理解が訪れた。
そのポイントは火葬場のすぐ下にあったのだ。
目を戻すと人影はすでに消えていた。
「穴場になるわけだ」そう呟いたのだという。
彼は以来そこには行っていないが、友人は相変わらず足を運んでいるそうだ。
山にまつわる怖い話8