中古のテント

先輩の話。

単独の登山が好きな彼は、大学生の頃ツェルト(簡易テント)を購入した。
中古だったが新品も同様で、それでいて安かったのだという。
良い買い物をしたと喜び、早速一人で近場の山に出かけたそうだ。

簡単ながらもそれなりに美味しい夕食を済ませ、先輩は焚き火の傍らで本を読んでいた。
そろそろ休もうかと考えた時、ツェルトに何か影らしきものが見えるのに気づく。
中に何か入ったか?と目を凝らした。

ツェルトの中に、誰かが座っていた。
正座している手と足が、入口側の隙間から見えていたという。

息を一つ飲み込み、思い切って入口を開け放つ。
ツェルトの中には誰もいなかった。

その夜はもう眠れず、次の朝が来るや否や山を下りたという。
問題のツェルトは処分するのも恐ろしく、かと言ってお寺でも引き取ってはくれなかったので、こっそりフリーマーケットで売ってしまったそうだ。

山にまつわる怖い話9

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