百日紅の木

友人の話。

山で下生えを刈っていた時のこと。
鎌を振る手を休め、近くにあった樹木によりかかって休みを取った。

「!」小さな、しかし鋭い痛みを腕に覚え、慌てて身を翻す。
左の二の腕から血が滲み始めている。まるで小動物に噛まれたような傷だ。
傷を押さえたその時、自分がよりかかっていた木に、何か違和感を感じたという。

不審に思い右手の鎌を木の方へ伸ばすと、いきなり表皮が波打った。
そのままスルスルと表皮は木から剥がれ落ち、下生えの中を滑るようにして消えた。
唖然とする彼の前には、つるりとした百日紅の木が一本、何事もなかったかのように残されていたという。

山にまつわる怖い話13

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