後輩の話。
一人で山道をのんびり歩いていたという。
右手奥の立木の根元に、何かモコモコと蠢くものが目に付いた。
気になって足を向けてみると、衰弱した土竜が力無く周りの地面を掻き回している。
なぜ土竜が地表に出ているのだろう?
そう思って見続けている彼の目の前で、新しい土竜が土を掻き分けて現れた。
その時初めて、辺り一面に転がっている黒い小動物に気がついた。
都合二十匹ほどの土竜が、弱々しく黒い土を掻きながらもがいている。
まるで何かが地面の下で土竜を追い立てているような感じがしたのだという。
そこはかとなく不安になり、足早にそこを立ち去ったそうだ。
山にまつわる怖い話17