パッシング

友人の話。

大学生の頃、男ばかりの四人組で夜の峠に出かけた。
麓の港町の夜景を肴に、一杯やろうという腹だった。
酒の飲めない彼も、いつものごとく運転手として駆り出された。

何事もなく帰宅の途につき、峠を下っていると。
すれ違う対向車が全て、彼らの車にパッシングしてくる。
あまりにもパッシングが続くので、途中のファミレスで停車し、車を確認した。
一見、何もおかしな所はない。

大したことじゃなかったんだろうと考え、そこでそのまま軽食を取ることにする。
階上に上がりメニューを見ていると、「あっ」と声を上げた者がいた。
どうした?と聞くと、黙って階下の車を指差す。

車の屋根、その中心に、一組の足形がくっきりと浮かび上がっていた。
小さい。成人男性の物ではないようだ。
きちんと揃えられて前を向き、指の形状までよく見える。

ファミレスを出ると、そのままコイン洗車場に駆け込んだ。
足形は泥で付けられており、綺麗に洗い流すことが出来た。
幸いその後、取り立てて変わったことは誰の身にも起こらなかった。

パッシングしていたドライバーは一体何を見ていたのか。
それが皆を悩ませたが、結局わからないままである。

山にまつわる怖い話22

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