囁く声

先輩の話。

一人で岩登りをしていた時のこと。
切り立った岩壁に張り付いていると、後ろから囁く声がした。

 ねぇねぇ ねぇねぇ

身を竦めた視界の隅に何かが映る。
いつの間にか、自分の背後で何か黒い影が踊っていた。
絶対に振り返らぬと決め、必死でその壁を登り切る。
その間ずっと、背後から楽しそうに誘う声が続いていたという。

多分、振り向いたら落ちてたと思う。直感だ。根拠はないけどね。
一人の時はとにかく気をつけろと、先輩は最後に付け加えてくれた。

山にまつわる怖い話23

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