楽器の音

友人の話。

日のある内に下山しようと、強引に藪漕ぎしていた時のことだ。

どこからともなく、トランペットの音が聞こえてきた。他の楽器も鳴っている。
ははぁ、さては下った所に学校があるな。
夕焼け空に微かに響く、ちょっと下手くそな楽器の音を聞いていると、とにかく無性に郷愁を覚えた。懐かしい。足を早めて斜面を下る。

段々と音が近くなってくる。そろそろ藪も抜けられるかな。
そんなことを考えていると、いきなりペットの音がプツッと消えた。
吹くのを止めたという感じではなく、強引に打ち切られたような印象だった。
その後、すぐに開けた場所に出た。

彼が対面したのは、既に廃校になった小さな中学校だった。
破れ放題の校舎には、当然ながら誰の姿も見えない。
呆然と見上げる彼の耳に、カァカァと烏の鳴き声だけが聞こえていた。

山にまつわる怖い話27

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