知り合いの話。
猟師をしていた祖父と、一緒に山に入っていた時に教えられたこと。
俺も何度か首吊りした奴を見たけどな、ありゃ見目がいいモンじゃない。
下が垂れ流しになるからな。
それから首吊るんなら、絶対に松の木でしちゃなんねェぞ。
松に取り込まれて成仏も出来なくなっちまう。
ほれ、あんな風にな。
そう言って祖父が指差した先、大きな松の陰に、一瞬灰色の人影が見えた。
すぐに消えて見えなくなる。
え? あの木で首吊った奴が居るのかって?
さぁてどうだったか。随分と前のことだからな。
ま、自殺なんかするモンじゃねェってことだ。
その教えのせいかどうか。
彼はどんなに辛くても、死にたいなどと考えない大人に育っている。
山にまつわる怖い話27