へんげ

友人の話。

彼の祖父が蒔割りをしていた時のこと。

手近な一本をつかみ出し、鉈を振り上げる。
次の瞬間、支えていた蒔が別の物に姿を変じ、ニュルリと腕に巻きついた。
愕然とした。蒔は茶色の蛇に変身して、祖父に牙を剥いたのだ。

噛まれる寸前に慌てて腕を振り回し、蛇を地面に叩き落とした。
鉈を持って追い掛けると、蛇は今度は栗鼠に姿を変え、ちょこまかと一番近い立木に走り登る。
ガサガサと青葉が揺れたかと思うと、ザッと茶色い塊が宙に飛び出した。
雲雀に似た鳥になったそれは強く羽ばたき、夕焼け空を飛び去ったという。

裏の山には変化(へんげ)がおってな、儂も時たま見とったが。
しかしあれだけ見事な変化は、後にも先にも居らんかったのぉ。

お祖父さんは酒を飲む度、そう言って感心していたそうだ。

山にまつわる怖い話27

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