首切れ鳥

友人の話。

釣り仲間と二人で、鮎釣りに出かけた。泊まり込みだ。
夜になり、釣った鮎を塩焼きにして楽しんでいると。
河原の下の方から、タタタッと何かが走ってきた。

身構えた二人の前に現れたのは、首を落とされた鶏だった。
切断面からピュゥと血を吹き上げながら、哀れな鳥は闇に消え去る。
「誰かが鶏をつぶそうとして、逃げられたんだろう」
相棒がそう口にした。自分でもあまり信じてはいない様子に見えた。
いつまで経っても、鳥を探しに来る者など居なかった。

それから帰途につくまでの毎晩、首切れ鳥は彼らの横を走り抜けた。
「多分、同じ鶏だったと思う。確認はしてないけど。特に害はなかったんで、二人とも無視したさね」

「気味は悪かったけどな」彼は最後にそう付け加えた。

山にまつわる怖い話28

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