おかしな峠道

同僚の話。

彼は道路保全の仕事をしているのだが、受け持ち区間の中におかしな峠道があるそうだ。

山の中腹を走るその峠道では、ガードレールや道路標識の破損が異常に多い。
まるで車が突っ込んだかのように、金属の部分がクニャッと曲がっているのだと。
しかし表面などには傷らしい傷もなく、また車が事故を起こすさないような場所に限って、設備は損壊しているという。

ある夏の日、そこの峠で、彼が歪んだガードレールの検分を行っていると。
不意に山の上方から耳慣れない、大きな音が聞こえてきた。

 きょーーーんっ

言葉にするとそんな感じの音だったらしい。何かの声のようにも聞こえた。
ギョッとして山を見やったが、既に音は静まり、何も変わったことはない。
仕事に戻ろうと顔を戻し、再びギョッとする。
ほんの少しの間に、先程まで何も異常がなかった部分のガードが、大きな手で押し潰されたかのようにへたっていた。

実際にそんな瞬間に立ち会ったのは、後にも先にもその時だけらしいが。
「あそこには何か居る」
彼は困ったような顔で、話の終りにそう言った。

山にまつわる怖い話28

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