友人の話。
地元の山道を一人歩いていたところ、前方の繁みの中から不意に声がかけられた。
猫、好きか?
反射的に「好きだけど」と返した目の前に、ぼとんと何か降ってきた。
千切り取られた猫の首だった。
一瞬硬直してから、叫び声を上げて逃げ出した。
人家のある辺りでやっと足を止めたが、次の瞬間、背後から渋い声が問うてくる。
好きだって言ったろ?
怖ろしさに頭の中が真っ白くなり、道にぺたんと座り込んで泣きじゃくっていると、村の駐在さんが見つけてくれた。
事情を説明し、先ほどの山道まで一緒に行ってもらう。
地面に濡れた黒い染みはあったが、猫の首はどこにも見当たらなかったという。
山にまつわる怖い話41