写らない小指

中学生の頃から18歳辺りまで、心霊写真がよく撮れる時期があった。
その頃写真を趣味にしており、バッグには常に使い捨てカメラを入れていて、ちょっといい風景だとかを見つけるとシャッターを切っていた。

24枚撮りでその中に1枚か2枚、確実に心霊写真が写ってしまう。
私自身には霊感など全く無く、遊びで心霊スポットなんかに行っても寒気すら感じない。
でも、なんでもない所で写真を撮ると霊らしきものが写る。訳の分からない状態だった。

友達にこのことを話したら見る間に有名になってしまい、カメラを向けると本気で拒否されることになってしまった。

中三の夏休みまであと半月ほどの週末、友達の家に何人か集まり、泊まって遊ぶことになった。
話したりゲームしたり、誰と誰が付き合ってるだとか片思いの相手がどうだとかと楽しんでいたが、夜がふけると季節柄もあり怪談へと流れていった。

そうなると私の迷惑な特技、心霊写真の話になってしまう。
夕焼けに映える海辺に手がのびる、静かな小路に顔が浮かぶ、etc。
皆は怖がりながらも楽しそうに聞いていた。
すると一人(以下A子)が言い出した。
「カメラ持ってきてるんでしょ? 一枚撮ってみようよ」

何が起こっても知らない、何かあっても対処できないと言っても聞き入れてもらえず、友人達の上がってしまったテンションに押し切られて、結局集合写真を撮ることに。
私以外がそれぞれポーズをとり、それにあわせてシャッターを切る。
これで写ったら怖いよね等と言いながら、皆笑っていた。
残り枚数が少なかったので適当に写真を撮って使い切った。

翌日の日曜昼前に友人宅を出て、カメラを現像に出してから家へ帰り、夕方犬の散歩のついでに写真を受け取った。
案の定、心霊写真は取れていた。その集合写真だった。
A子の右手の小指だけが写っていなかった。
慣れていたのでそれを見ても、ありがちだなぐらいにしか思わなかった。

月曜。一応その写真を持って登校し、教室に入るとA子が俯いてぶつぶつ言いながら、指を折って数を数えていた。
おはようと声をかけたが、時折首をかしげながらぶつぶつと数えているばかり。
何事か尋ねると、「数を数えられない」と言った。

訳がわからないので詳しく聞くと、夏休みまで何日か、カレンダーを見ながら指を折って数えていたが、どうしても「4の次」が言えず、小指も曲がらない。
何度数えなおしても4の次が分からないのだと。

A子に恐る恐る写真を渡すと、引きつった顔で「これのせいなの・・・?」と。
分からない、どうすれば良いのかも分からないと答えると、そうかと呟き、急に顔を上げて「やっぱ遊びでやるとよくないね」と、見てて辛くなるくらいの、カラ元気の明るい声で笑った。

数日後、教室に入るとA子は駆け寄り、手を私の方に突き出して、一つ一つ指を折って「1、2、3、4、5っ!」と勢いよく数えた。
「昨日帰ってから急に治った! たいしたことないじゃん!」と、今度は普通に、明るく笑った。

今でもあれは何だったのか、心霊写真のせいなのかよく分からない。
霊感というのがあれば何か掴めたのかもしれないが、今では心霊写真らしきものも撮れなくなった。
ともあれ、A子に障害が残らなくて、本当に良かったと思う。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?108

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