杉の上のなにか

残雪関係ないけど雪国の山の話
自分が高校生の時、叔父が話してくれた叔父の体験談

祖父が所有していた山の整備に叔父も若い頃は手伝いに行っていたそうだ。
山の開けた所で間伐した木をまとめてワイヤーでくくってる時、叔父は視界の隅の杉の木の上の方でなにかが動くのが見えた。
作業急がないと夜になるって所だったから、手元から顔をそらさずに目だけそっちにやった。

最初は猿かなと思ったが、水色の作業服が見えたから、よその仲間が枝おろしでもしてるのかと思った。
だが、傍らで一緒に作業している祖父が「見んなや」と言う。
よそ見するなって意味かと思って、叔父は曖昧に返事して作業続けた。
ところが、その杉の木の方からまるでこっちを見ろと言わんばかりに枝を揺する激しい音がした。

なんだと思って叔父はまた目だけでそっちを見た。
水色の作業服はたしかにこっちに背中を向けていたが、その人の顔は首をガックリと後ろに折ってこっちを見ていた。
振り向いていたんじゃなくて、ガックリと後ろに折れてた。

目の端でしか見てないから表情は分からなかったが、とにかく普通じゃないことだけは分かった。
「行くで」
祖父がそう言うので、見なかったふりをして作業が途中にも関わらずそのまま無言で山を下りた。
家に帰ってから叔父が祖父にあれはなんだったのか聞いても一切「知らん」と言われたそうだ。

祖父は私によくキツネつきの話とか聞かせてくれたけど、そんな話は聞いた事が無かったから、何なのか今でも気になってる。

山にまつわる怖い話59

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