ベジボン

古い話なので脚色もあると思うが、そこはご勘弁頂きたい。

学生時代、鳥山明の漫画に出てきそうな顔の友達がいた。
丁度当てはまるキャラはいないのだが、あえて言うなら、ベジータ+ザーボンかな。

入学当初、親睦を深める為に同じ科の奴ら数人と飲み会をやったんだ。
大学の近くに一人暮らししていた、ベジータ+ザーボンのアパートに即決定。
女の子も何人か呼んで、エロチックなハプニングにwktkしながら買い出しとか行ったw

酒も進んできた頃、お決まりのパターンで怪談話の流れになった。
よくある怪談話や体験談が進むにつれ、このベジータ+ザーボンがトンでもない霊感持ちってことが発覚したのよ。

この時期はどこに行っても霊感持ちなヤツと出会う事が多かった。
今思うと、オカルト方面での待遇は生涯で一番良かったかも知れないw

多分、誰が見ても「こいつは本物だ」と思うと思う。
俺自身、心霊話は大好きで、あちこちで聞いてきてストックしてあった話の中でも激選した物をぶち撒けたつもりだったが、ベジボンの(本来オチが付きにくい筈の)体験話には尽く敵わなかった。
女の子がいる手前、最初は俺も対抗してたと思う。でも次第に対抗心は無くなり、素直に聞き入る様になってしまった。

非常に盛り上がっていたのだが、ベジボンが急に話に参加してこなくなった。
俺が密かに「どうした、大丈夫?」みたいな事を聞くと、「そろそろヤバイよね」とはにかみながら言われたっけ。

ああ、「心霊話をしていると、幽霊が集まりやすい」と言うモンなぁ…
とベジボンの言いたい事を理解したつもりでいた時に事は起こった。

「ベランダに知らないおっさんがいる」

どこにでもいると思う。ちょっと空気読めないヤツっているじゃない?
そのちょっと困ったちゃんなヤツが笑いながらいきなりこう言い出したんだ。
ちょっとだけ顔が石田壱成に似た奴だったので、ここでは仮名として壱成とする。

外を見る。暗い。時間は1時か2時位だったと思う。
まだ明るい内から飲んでたので、カーテンはしいてなかった。

そのガラスの向こうに…
いた。

丁度左肩がこちらに一番近い形で、向こうを向いたおっさんが立っている。
やけに猫背で、ぴくりとも動かない人間が、ベランダに立っている。

ベジボンの部屋は2階。人が立っている訳が無い。
仮にイタズラとしても、何の得があって…と言うか、その佇まいが生きてる普通の人間のそれでは無いんだよね。

さっきまでの盛り上がりは既に無く、皆真っ青な顔をして…
終いにはすすり泣きし始める女の子まで出てくる始末。

暫くすると、そのおっさんがいつの間にかいなくなっていた。
ベジボンいわく、数時間前からそのおっさんはいたらしいのだが、突っ立ったまま、1階と2階とを上昇・下降を繰り返していたらしい。ベランダの床をすり抜ける様にして。そのままの姿勢で。
そして最後に「昨日まではいなかった人なんだけどね、何もしなければ実害は無いと思うよ」と付け加えた。

ちょ、ベジボンさん、その言い方他にもいるんすかw

もう楽しい飲み会をやる様な場では無くなってしまった。
俺も冷静に周りを見てる様な書き方をしてはいるが、正直ガクブルで早く暖かい所に行きたい様な気分でいっぱいだった。

でもね、またいるんだよ。そのおっさん。
どうやらさっきのベジボンの言う事は本当らしい。別に疑ってはいなかったが。

そこで何を思ったか、殆どヘベレケ状態だった壱成が立ち上がって、「オラァ!テメェさっきから何なんだよ!!」とおっさんに向かって怒鳴りながら向かって行った。

普段なら、「何コイツwマジ勘弁して欲しいんですけどww」と笑って見ていられるのだが、状況が状況である。
取りあえず、壱成を止めようと立ち上がろうとした時に見てしまった。

おっさんがこっちを向こうとして、ゆっくりと回転してるのよ。
「回転」と書いたのは、その動きが人間や動物の動きではなく、まるでカラクリ人形や電気仕掛けの玩具みたいな動き方だったから。

そこで俺の恐怖度MAXですよ。
行き過ぎた恐怖と、壱成に対する「ちょ、お前何やってんの」が絶妙に最高の状態で混ぜ合わさったのかな。

キレたw
もうね、完全にキレた。
無我夢中で壱成を掴んで倒して、蹴り入れてたと思う。
周りの奴らに速攻で止められたがw

その後いつの間にかおっさんはいなくなってた。
で、壱成に謝りまくった。ちょっと泣いてたな、あいつw
いや、俺も男だからケンカ位した事あるけど、基本穏健派だからむやみに人殴ったりしないんだけど。

真夜中に暴れたせいで、隣の部屋の人からは怒られたが、ベジボンにはちょっとだけ褒められたw

あのまま壱成を放っておいたらどうなったか分からない。お前がやらなかったら、俺がやってたと思う、と。

ほんのりと怖い話54

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