佐々木さんの階段

建設業だか現場監督だか、そんな様な仕事をしているらしい知り合い。
(仮にシンさんという)
大阪、あるゴミ処理場建設の時の話らしい。

そこではよく作業員が迷子になったそうな。
そして発見されるのはいつも同じ場所。
ゴミを焼却する巨大水槽みたいになってるトコ。
(水槽って呼び名じゃなかったと思うけど名前忘れてしまった)
だけど水槽に入るには通らなければならないドアがあり、そのドアには「立ち入り禁止」の看板とともにカギがかかってる。

それなのに、迷子になる人は皆異口同音に
「迷って、普通に通路をウロウロしてたら何時の間にかそこにいた」
「立ち入り禁止やカギのあるドアは通っていない」
という。

発見の仕方も、いつも同じく「おーいおーい」という声が聞こえて、またか!?と思い上から水槽を覗くと人がいる、という感じだった。

そんなある日、新入りの作業員が一人また居なくなった。
しばらくしても戻らないのでシンさんともう一人が探しに行く事になった。
そこらを探しても居ないので、二人顔を見合わせ
「やっぱりあそこかな・・・」
と例の水槽を見に行くことにした。
責任者が持つ立ち入り禁止のドアのカギを持ち、その場所に向かう。

案の定、新入りさんは水槽の中に居た。
しかも「向こうの階段からきた」という。
水槽からの階段なんて他に作ってねーぞ・・・と思いながら「向こう」へ3人は行ってみた。

その時シンさんは思い出したんだ。
そこに階段を作らなくては!と主張していた上司がいたことを。
その為、階段を作るスペースだけはある。
でもそのスペースには足場のような簡易な階段があるだけでその階段はどこにもつながっていない。
パッと見てすぐわかる程度の短い、簡易な階段があるだけのはずだった。
結局上司が主張していた階段は必要なしという事で作らなかったのだ。

しかし新入りさんは「普通にちゃんとした階段がある」という。

新入りさんは
「歩いてたらこの階段に出たんですよ。で、踊り場にいたら更に下から佐々木さん(仮名)が声をかけてきたんです。 おーいおーいって。手招きしてました。やべっ、こんなとこに居たのを怒られる!と思って スイマセン!って言ってそこから出てきたら、水槽だったんです。だけどおかしいですよね。佐々木さんがいるわけないのに俺焦ってその時一瞬忘れてたみたいで」

そう、佐々木さんがいるはずない。
建設中に病気で亡くなっていたんだから。
佐々木さんがなぜか「作らなければならない」と病的に主張していた階段。
必要もないのに作るといって聞かなかった階段。
亡くなっても尚、階段を作ることを諦めなかったんだろうか。

恐る恐る新入りさんが出てきた場所を3人で見に行くともちろんそこには簡易な足場しかなかった。
佐々木さんの階段の下には何があったんだろ。

ちなみに、そこの現場では他にも、佐々木さんのように病的な様子で「ここで作業しなくてはならない」と主張して作業する必要のない煙突に登りだす人もいたらしい。

ほんのりと怖い話54

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