母が亡くなってすぐ、一年くらいで新しい彼女をこさえた父。
後妻として迎えることになる彼女と、秘密の温泉旅行に出かけました。
家に16歳の私と4歳の弟二人だけ残しての旅行ですから、子供たちには勿論、周囲には内緒です。
まあなんせ親と連絡が付かない。しっぽりハメハメ中ですからね。
16歳と言ったってガキですよ。
弟の保育園の送り迎え、お弁当。ひとりで世話しないといけないのは不安です。
当時高校に在籍はしているものの殆ど登校拒否だった私は大検予備校に通っておりました。
父が不在中、保育園の送りの時間の都合で予備校は遅刻していけばなんとかなっていました。
しかし、大問題が発生。
父には前もって何度も言っていたのですが、大検の受検の締め切りがギリギリ迫っていまして。
受験する前に高校には在籍証明やら単位の証明書やらを貰わなくてはいけないし、それよりまず退学届けを出さなくてはいけない。
当時大剣は一年に一度しか試験がなかったので、これを逃すと一年待たなくてはいけない。
一発受験で全科目合格(11科目から12科目で大検取得。私に必要なのは8科目分の単位)を狙っていた私には死活問題です。
タイミングが悪いことに弟は熱を出すし、会社に電話すれば休暇を取っていますといわれるし、父からの連絡ははなしのつぶてだし。
長女の私が一人であせっていた頃、温泉で。
若い新しい嫁候補と鼻の下を伸ばして2ショットの写真を撮ってもらっていた父。
現地で現像した写真を現像してびっくり。
湯煙の中、若い嫁の肩を抱き寄せデレている父親と、うっとりしている後妻の頭の丁度真ん中辺りに怒りの表情で父を睨み付けている亡き母似の顔がくっきりと!
「カアチャンバケテデタヨ!」
びびった父がやっと私に電話をかけてきました。
当時デジカメじゃなかったんで。
撮った写真を現像して出来上がるまで~ってくらいの長期の温泉滞在。
子供二人残して!
「テメ、この、馬鹿親父っ~!!」
とはいえませんでしたけど、散々説教はしました。
退学届け出さなきゃなんないから早く帰って来い!天山が風邪引いた!と。
心霊写真?らしきものは、父の会社のデスクに大事にとってあります。
父曰く、
「お化けでも妖怪でもいい!プチ子(母)が会いに来てぐでたんだかだぁ!(泣)」
だそうです。
再婚しちゃいましたけど、今でも母が一番好きなんだそうです。
写真の母は、写真を撮ってから20年弱たった今ではもう消えてしまっています。
成仏したのかもしれません。
別に私が困っているから怒って母が化けてでてきてくれたわけではないと思います。
どちらかというと、父が新しい女を早々に見つけてきたことに対して嫉妬し、化けて出てきたんだと思います。
何となく分かります。母ちゃんはそういう女です。
実際のところ、ただの湯煙が母の霊のように見えただけかもしれませんが、前妻と後妻と父の3ショットの写真を会社のデスクにしまって毎日眺めては涙していた父。
ほんのりほんのり。
ほんのりと怖い話68