ひまわり

私が小学校4年生の夏休みのことでした。
3歳下の幼馴染みと、家から1kmほど離れた河原へ遊びに行きました。
「暑いから持って行きなさい。」と、祖母が用意してくれた
氷水入りの水筒をさげて、たらたら坂道を下って行きました。

河原までは子供の足でも10分そこそこ。
午後の日差しに炙られながら、小一時間遊んだでしょうか。
時々、持ってきたタオルを水筒の水で冷やして、幼馴染みの肩や首を拭いてあげました。

夏の太陽はまだまだ高く、川べりに立つ私たちの影は足元に溜まっていました。

夕方までまだ間があるし、遠回りして帰ろうか、と私たちはいつもは通らない道を選びました。

中学校のグラウンドの脇を通り、農家の作業小屋の前を通り過ぎ牛小屋を通り過ぎたら、田んぼが広がっていました。

道路はアスファルトで舗装された、割と広い道路です。
車の邪魔にならないように右側を、青く伸びている稲にささやかにいたずらしながら、てくてく歩いていきました。

「ひまわり。」幼馴染みが田んぼの真ん中を指差しました。
「?」見ると、黒々とした大きなひまわりが、首をうなだれてゆらゆらと動いています。
「おっきいねー。踊ってるみたい。」
幼馴染みはひまわりの動きに合わせるように、うつむいて肩を動かし始めました。

最初は笑って見ていました。次に、いい加減飽きて「行くよ。」と声をかけました。
でも動きをやめない幼馴染みに、なぜだかうすら寒さを覚えました。
「もうやめなよ!」 言いながら、なぜそんなにひまわりの真似が面白いのかと田んぼのひまわりを見ると、それはひまわりではありませんでした。
だったら何なのかと聞かれると、”ペラペラの人間の影”というのが一番近いかもしれません。

「わ、わ、わ、わわわわわわああああああああああぁぁっぁぁぁぁ」

叫び声は自分の口から出たのでしょう。
近くの作業小屋から人が飛び出してきた時には、ゆらりゆらりと動き続ける幼馴染みと、正気をなくしてタオルを振り回している私がいたそうです。

ここからは、昨夜母に聞いた話です。

4年生の夏に、こんなことあったよね?と聞いてみたんです。
そしたら…

家に連絡が付いたのは、祖母が持たせてくれた水筒に住所と名前が書いてあったからだそうです。
私と幼馴染みは、救急車で病院に運ばれたらしく正気に戻ったのは3日後だったそうです。
回復したものの、夏休みに入ってからの記憶がすっぽりと抜け落ちてて、そのせいなのかしきりに「損した、損した」と言っていたと…。
ただ、その3日間の私の様子だけは決して教えてくれませんでした。

夏休みの間、2学期が始まる前に父の仕事の都合で引越しすることが決まり、その当時の同級生たちに挨拶もしないまま、その町を離れました。

もしかしたら、町には居られなくなる様な何かを、私は犯してしまったのかもしれません。

今から20年ほど前の話です。

死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?47

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