茶袋で一くさり。
俺の知人で立川基地の40代の自衛官の体験。
若いころ、レンジャーに参加し、レインジャーバッジを持っている。
レインジャー訓練は2日も3日も不眠不休で山越えをする。
食料も自主調達。
実際に知人は蛇を見つけて焼いて食ったそうだ。
フル装備が重く体が疲れきっていて、うまいんだかまずいんだか味は不明。
とにかく骨っぽかったという。
そんな真夜中、月明かりで山道を急いでいると、かなたの枝に何やらキレイな袋が下がっていて、それが手の届きそうな近くに見えたり、また遠ざかって見えたりする。
月明かりでキラキラ、金糸の模様も見える。
手の平くらいから、30センチくらいの大きさになったり、大きさも距離も定まらない。
キレイな袋なのだが、それを欲しいという気は起こらなかった。
とにかく、レインジャー訓練は時間内にゴールにたどり着かなければ失格してしまう。
知人は袋を見ないようにしたまま前に進んだため、袋は視界から消え去り、後はどうなったか知らないという。
レインジャー訓練中は極度の疲労のため、幻聴幻覚はしょっちゅうだったそうだ。
これは「茶袋」という妖怪で、「かん吊るし」などと同種のものだ。
茶道の「シフク」という道具類を包む絹の袋の姿をしていて、高価なものであったため、それで人心を惑わし危険な場所などに人をいざなったモノだろう。
山にまつわる怖い話74