一匹の小さなクワガタ

たぶん信じてもらえないだろうけど少し告白。
俺は10年前に賭け事をすべてやめた。というかやめさせられた。

祖母の遺産のおすそ分け(300万)をすべてスロットで溶かしたのがバレて親父に殴られ、祖母の墓前に謝りにいったときのことだった。

うちの先祖代々の墓は山のふもとにあって、樹齢200年を越えるといわれる巨大な楠木の下で俺はむりやり墓掃除をさせられた。
草を刈り周りをはいて清め、墓石に水をやり、墓掃除をおえて適当に手を合わせていたその時だった。
シャツの襟元に一匹の虫がすべりこんできた。とたんに右の乳首に電流がはしった。

悲鳴をあげてシャツをまくると、一匹の小さなクワガタが俺の乳首をあのはさみでつねり上げていた。
引き剥がそうにも強力な顎でくわえこまれており、無理にとろうとしたらこっちの乳首がもっていかれそうな、それくらいの激痛だった。

あまりの痛みに半泣きになりながら、「おばあちゃん堪忍してくれ」と心の中で叫びながら小クワガタをはたくと、ぽろりと小クワガタは地面に落ちた。
おそるおそる右の乳首をみると、不思議なことに無傷。
地面をみると小クワガタもいつのまにか消えていた。

それ以来、なぜかパチンコ屋にいくのがためらわれ、まったくいかなくなってしまった。

山にまつわる怖い話77

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