私が3才くらいの時の話。
和室に1人でいる時に、何を思ったのか下敷を上に投げてはキャッチする、みたいなことを繰り返して遊んでいたら、うっかりタンスとタンスの隙間に入り込んでしまった。
取ろうと思ってとりあえず隙間を覗いてみたら、格子のような影が見えて、その向こうに影絵のように宴会かなにかをしている様子が見えた。
影絵のようにって言うのは、全体的にオレンジ色の光に包まれていて影しか見えない感じ。
その様子を眺めている時は基本、その宴会のどんちゃんした感じの音しか聴こえなかった。
例えば、外でどれだけ虫が鳴いていても宴会の音しか聴こえなくなる、みたいな。
でもその後、母がご飯に呼んでくれる声は聴こえたから、私を呼ぶ声は聴こえたのかなと思う。
タンスとタンスの隙間を眺めている時の、まるで別世界にいるような感覚は今でもはっきりと覚えている。
小さいながらもその感覚が不思議だったのと、宴会の様子が本当に楽しそうだったので、暇があれば私はその隙間を眺めていた。
その隙間を発見して一ヶ月後くらいだったと思う。
父の仕事の都合で引っ越すことになった。
引っ越した先では、タンスとタンスの隙間をみても何も見えなくてがっかりした。
それから私も大きくなって、アレは小さいときにみた夢だったのかな、と考えるようになった。
けれど最近姉にその話をしたら、姉は同じ場所でこちらに向かって手を振る女の人を見たという。
でも引っ越しのときに見たけどあそこ普通に壁しかなかったんだよね、とも言われた。
私と姉で見たものは違うけど場所は同じっていうのが不思議だ。
ほんのりと怖い話105