バイクを大音量でふかす音

弟の話

弟は昔から車だのバイクだのが好きで、それ系の専門学校に入ったので一人暮らしを始めた。
そこに入ってすぐ、夜中寝ていると「ブルンブルン」とバイクを大音量でふかす音が聞こえて目が覚めた。
少し離れたところで鳴っているようなのだが、走り出す気配が無い。
しばらくしてやんだのでまた寝たんだが、しばらくするとまたバイクの音がして目が覚めた。
ヤンチャな奴が近くの住んでるのか・・と初日からウンザリした。
そしてそれは毎晩続いた。

しばらくして、俺が様子見と観光がてら遊びにいったらその話をしたので、夜俺が見にいってやるよと言ったんだが、その日から俺がいた3日の間、一度もなかった。
もしかしてもう引っ越したのか、と思って喜んでいたところ、俺が帰ったその日の夜からまた始まった。
さすがにきついので、多分同様の苦情もきているだろうけど・・と思いながら管理会社に苦情を伝えたのだが、「近隣からそういう苦情は一切でていない」と言われた。

不思議に思い、学校で愚痴ったら「それ、幽霊じゃねーの(笑)」という話になり、「俺の兄貴の知り合いにみえるやつがいるから」とか言う奴が居て、紹介してもらうことになった。
相手の職場(居酒屋)にその日に押しかけて、何の事前情報も伝えてなかったのに、そのオッサンは俺の顔を見るなり、
「ああ。バイクのにーちゃんが後ろにおるわ。ただのイタズラやからほっとき。構ってくれて嬉しいゆーてるから、ほっといたらそのうち消えるわ」
とあっさり言われた。

「ただ、様子が変わったら逃げや。その手の奴はちょっかいかけてるうちはええけど、悪意がでだしたら影響が出るし、下手したら命とられるで。首と左手注意しーや」
と忠告を受けた。
実際、その日から音がしても知らん顔して寝たふりをしていたら、数日で消えた。

それから半年ほどして、色々あって彼女と半同棲生活が始まったんだが、その頃から弟は毎晩のようにバイクで事故に遭って首が転げ落ちる夢をみて、彼女は仕事先の美容室で何もないところで突然転び、装飾品にぶつかり何故か首を痛めてしまった。
何となくヤバイと思い、再度オッサンのところに相談にいったら、「今日は家に帰らず、明日昼間に荷造りしてさっさと逃げろ。荷造りは弟君だけでやって、彼女は一歩も家に入れるな」と。

前に言われたことが当たった怖さもあって言われるままにして、一旦彼女の家に転がり込んだ。
オッサン曰く、バイク好きでヤンチャな男性がそこに住んで、彼女(おそらく美容師)と一緒に暮らしていたけど、彼女に振られてやけになっているところでバイク事故にあって死んだらしい。
首がつながっていなかったから、もしそのまま長居したら弟が彼女が死んでたかもしれない、と。

この後弟と彼女はツーリング中に車線越えてきた車と接触して、死にはしなかったんだけど、一歩間違えたら・・・という状況になり、彼女は左腕骨折して仕事辞めて、弟は首の頚椎捻挫(鞭打ち)になっていた。
偶然かもしれんけど、その時はまだ引っ越しただけで家の契約が切れてなかったので影響がでたんじゃないか、なんてちょっと思ったり・・

まあ、実際にはそのオッサンの言うことがどの程度本当なのか確認なんてできないから、偶然といえば偶然なのかもしれないけど。

ほんのりと怖い話123

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする