俺は昔ある高校で国語の教師をしていた。
そのときのことなんだが、着任してしばらくたってからのこと、古い学校だったので勤続30年くらいの長老みたいな教師がいた。
その彼があるときお茶を飲みながら俺の趣味の磯釣りに話題が及んだとき、「国語の先生はあそこの海につりにいっちゃ絶対だめだ。」と妙に脅すような調子で俺に言うのだ。
その訳を聞いてみたんだがなかなか教えてくれない。
しつこく聞くと断片的に次のような話がわかった。
その以前に国語教師が一人で夜釣りに行ってとうとう帰ってこなかったことがあったそうだ。
結局いろいろ探したが遺体もあがらず困ったあげく、故人の飼い犬を連れて故人の車が乗り捨てられていた場所に連れて行ったところ一緒に行った人を連れて故人の遺体がテトラに挟まれて沈んでいた場所まで案内したそうだ。
そこには変わり果てた国語教師の姿が。
ここまでは立派な忠犬の美談なのだが、
その老同僚がそんな話をとつとつと話してはくれたのだが、肝心のなぜ国語教師だけがそこに行っていけないのかは頑として教えてはくれなかった。
数学や理科の教師に対してはそんなことは絶対に言わないのに、国語教師の俺には「行くな」の一点張りだった。
当時の俺も若かったからそんな注意は全然聞かずに夜釣りにも一人ででかけたものだ。
だからといってなにか禍々しい出来事が起きたわけでもない。
その後、老同僚は退職しそんな話も忘れかけてしまっていた。
退職した彼はまもなく老人性の痴呆とやらになり、俺の疑問に答えられるような状態ではないと風の噂に聞いた。
彼が知っていた何らかの「秘密」は永遠に封じられてしまったといって良いだろう。
俺はといえばその後しばらくは夜釣りにも行っていたのだが、ある時別の関係からこんなことを聞いた。
俺が知っている国語教師の遭難はその学校の国語教師としては2例目の事件だったらしい。
つまりその10年ほど前にも国語教師が釣りで水死していたというのだ。
老同僚はそれを知っていて新しい遭難者を出すまいと忠告してくれたのか・・・。
それを知るすべはない。
その話を聞いて俺は夜釣りはふっつりとやめた。
夏でも日のあるうちに道具を片づけてしまう。
そのあたりから夕まづめを狙ってやってくる釣り師達は「これから釣れるんじゃないか?」と言わんばかりの怪訝なまなざしを投げてくる。
次に遭難するのが俺だなんて信じてはいないが、ちょっと怖いのも本心だ。
夕暮れの海辺を車で走りながら「今日は無事だった・・・」とつぶやいている。
海にまつわる怖い話・不思議な話2
コメント
国語教師だったと名乗る割に、文章が下手。